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4. 航路潜堤
有明海のようにシルトや粘土質の軟弱な底質が広範囲に分布する海域では、波や流れによって底質が巻き上げられ、底面付近の非常に高濃度な浮泥層となって航路・泊地まで運ばれた後に堆積するいわゆるシルテーションが問題となる。この現象は航路・泊地を埋没させ、船舶の航行や離着岸に支障をもたらしている。そこで、熊本港では昭和60年度より埋没対策工法に関する調査を開始し、ポケット凌渫地における現地観測、埋没予測モデルの開発等を行い、これらの成果をもとに平成3年度に暫定航路(水深−1.5m、幅100m)の両側約2kmにわたって水面下に没した逆下型コンクリートブロック(潜堤)設置した、その後現地観測等を行い、潜堤の埋没防止効果を実証し、シルテーション対策工法を実用化した。
4−1. 潜水堤による埋没防止効棄
埋没対策は、埋没防止施設と維持凌渫との経済比較を行い、最適な対策方法を検討しなければならない。熊本港では、防波堤が整備される前にフェリーバースの暫定供用のための航路を凌渫する必要があった。そこで、低コストで短期に施工可能な潜堤の設置が提案された。潜堤の効果として、底面付近の非常に濃度の高い浮泥層をせき止める効果と、潜堤の外側から運ばれてきた浮遊状態の底質を潜堤によって生じる上昇流に乗せて航路に堆積するのを防ぐ効果が期待される。
(1)ポケット浚渫地での観測
潜堤の効果を確認するため、昭和62〜63年度に航路予定海域に30m×50mのポケットを深さ2mで浚渫し、埋没対策として高さ1mの潜堤で囲んだ浚渫地と対策なしの浚渫地で埋没状況の比較を行った。その結果が図−8で、図中の矢印は荒天時を示す、対策なしのポケットが1年間で150cm程度埋没したのに対して、潜堤ありは荒天時でも顕著な埋没は見られず、潜堤の設置が塊没防止の上で非常に効果的であることが確認された。

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図−8 ポケット浚渫地中央部での埋没量の経時変化

Fig-8. Time−course change in siltation at the center of trenches

(2)埋没予測モデル
航路埋没防止に最適な潜堤の配置を求めるため、底泥の物理特性に係る室内実験および現地観測等により得られた知見に基づき埋没予測モデルを開発した。熊本港の配置は以下の2種類のモデルの結果を基本に決定された。
?多層レベルモデル(港研モデル:鶴谷ら,1989)
7層レベルモデルによる計算プログラムをもとに、底泥の巻き上げ、移流拡散、沈降・堆積過程を再現する。
?2層レイヤーモデル(四建モデル:渡邊ら,1993)
浚渫域の埋没は底層に沿う高濃度浮泥層の密度流的な流動によるものととらえ、底層の汚泥層濃度を一定濃度に固定し、浮沈量の増減を層厚の上書減として表す。
その後、本格開港に向けて、潜堤設置後の現地観測結果等を参考に、今後の埋没予測と合理的な埋没対策を精度よく検討するために、多層レベルモデルを主体としてfluid mudの流動、計算を組み込んだ合成モデル(鶴谷ら,1994)を作成し、ほぼ妥当な結果を得ている。
(3)潜場の最適配置
平成1年度暫定供用時の最も効果的な潜堤配置を埋没予測モデルにより検討した。潜堤の配置および高さは図−9に示す4種類で、波浪・潮位は昭和62年8月31日の荒天時とした。、ここでは、四建モデルの結果を図−10に示す、潜堤の設置により埋没量は14〜113と大幅に削減される。最も効果的なケースは潮汐により浮泥を強制

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図−9 計算ケース

Fig-9. Cases of the calculation

 

 

 

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